6戦目 2001.11.3 『東日本新人王決勝戦』  VS 伊佐次 茂伸(野口)   2R TKO  
対戦相手の伊佐次茂伸選手は、この試合まで5戦オールKO勝ちのMVP候補だった。一方、我らが音田選手も、ここまで3KOを含む5戦全勝で、全勝同士の力と力の対決は大会をおおいに盛り上げていた。
試合を前に、伊佐次は「KOで勝ちたい」と語り、一方の音田も「相手は名前が売れているので、勝って自分の存在感を示したい。」と語った。

 試合は、ゴングから互いに大振りのパンチを連発する、壮絶な試合となった。伊佐次の強力な左フックに対し、音田はこん身のフック、ボディブローで応戦。1回だけで100発を越すパンチの応酬となり、2人とも疲れきっていたが意地で打ち合った。

衝撃のドラマは2回に訪れた。
音田の強烈な右フックが横っ面を捉えると、伊佐次はグラリとキャンバスに崩れる。スリップと判断されたが、このチャンスを音田は逃さず、一気に連打で攻撃を仕掛ける。ロープダウンをとった後も手を緩めず、結局レフェリーが試合を止めた。

音田は試合後「相手のパンチを怖がってちゃ駄目なんで、逃げないで打ち返すよう心がけた」と語っている。

またこの頃の音田は、都内の印刷会社に勤める「サラリーマンボクサー」で、副業禁止の中、会社に秘密でボクシングをしていたため、この話題が新聞紙上を埋めていた。


最優秀賞に選ばれる!!

伊佐次を壮絶な打撃戦で破った音田選手は、最優秀賞に選ばれた。技能賞にはバンタム級の長井裕太選手、敢闘賞にはライト級の石田貴章選手がそれぞれ選ばれている。
しかしながら、このMVP受賞による新聞報道により、「サラリーマン・隠れボクサー」である音田選手には、「まさか・・・」の新たな闘いが待っていたのだった。





7戦目 2001.12.15 『全日本新人王決勝戦』  VS 丸元 大成(Gツダ)   2R KO
第48回東西対抗全日本新人王決定戦は、後楽園ホールに2,500人の観衆を集めて行われた。
「相手はガンガン攻めてくるタイプではないので、こちらから仕掛けて試合を盛り上げたい。」西の新人王 丸元選手との対戦を前に音田はこう語っている。
会場には、上司や同僚が駆けつけ、熱い声援を送ってくれた。
初回の3分が終わった段階では、力みが目立ち、左ボディ・アッパー以外は空振りも多かった。誰もがKO狙いの大振りだと思った。
しかし、2回に入ると試合は一転する。
左フックのトリプルから右アッパー、左フックとコンビをつなぐと丸元はたまらずダウン。キャンバスに大の字になった丸元は、一度は起き上がりながらも、がくりと膝をつく。そして、テンカウントが読み上げられた。2回1分42秒、鮮やかな、そして早すぎるKOだった。試合後、音田は初回の攻撃についてこう語っている。
「空振りはわざとじゃないけど、大振りは作戦です。相手は前に出てくるボクサーではないけど、一番怖かったのは相手のキャリア。自分の得意とする”打ち合い”に引きずり込むために大振りして、相手がムキになって打ってくるのを待っていたんです。」
ルーキーらしからぬこの戦いに、佐々木隆雄会長も「あんなことができるんだね。」と舌を巻いたという。